腕時計の歴史を語る上で外せないPATEK PHILIPPE(パテックフィリップ)。
ノーチラスやアクアノート、女性向けにはTwenty4など、様々なコレクションが展開されています。
その中でもカラトラバは、ドレスウォッチの最高峰として、愛され続ける名作です。
今回はそんなカラトラバの魅力を改めてご紹介いたします。
目次
PATEK PHILIPPE(パテックフィリップ)とは
そもそもPATEK PHILIPPEとはどんなブランドなのか、最初に振り返ります。
PATEK PHILIPPEは創業以来ずっと独立して経営を行い、デザインからムーブメント制作まで、完全に自社だけで行っているマニュファクチュールブランドです。独立ブランドとしてはROLEX(ロレックス)に次いで2位の売上を誇り、またAUDEMARS PIGUET(オーデマピゲ)、VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロンコンスタンタン)と一緒に世界3大時計ブランドとして呼ばれます。
その中でもPATEK PHILIPPEは世界一の腕時計ブランドとされています。
細部のパーツまで美しいデザインは、文字盤だけでも200以上の制作工程があると言われますが、そのすべてを熟練の職人たちが手作業で制作。
また、パテックフィリップ・シールというクロノメーター規格よりも厳しい精度を要求する独自の規格を設けており、最高の品質を実現するための厳しい検査が行われています。
さらに購入した腕時計が何十年経過しても修理を行うという永久修理保証まで、腕時計制作への徹底した情熱が人々に愛され続ける理由です。
PATEK PHILIPPE(パテックフィリップ)の歴史
歴史を簡単にまとめました。
ブランド創業まで
パテックフィリップは1839年に、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと、フランソワ・チャペックという2人のポーランド人が創業しました。スイス生まれのブランドとして広く知られているので、創業者がポーランド人というのはご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ブランド創業前に、彼らはポーランド軍や民兵として、祖国防衛のためロシア軍と戦ったり、制圧された祖国からフランスへと亡命したりと激動の人生を送っています。
1839年、スイスの地でPATEK PHILIPPEを創業
彼らがスイスの地に移住したのは1835年のこと。フランス パリでの経験を活かし、高級腕時計の販売を開始します。
1839年になると、パテックとチャペックは共同で事業をすることを決めます。これがPATEK PHILIPPEの前身である「Patek, Czapek & Cie」です。
後にチャペックが退社し、1851年に社名が「PATEK PHILIPPE」に変更されます。
1932年、スターン兄弟が経営権を取得
1929年の世界大恐慌により業績が悪化。文字盤製造会社を経営していたジャン・スターンとシャルル・スターン兄弟が、1932年に経営権を取得します。
このスターン兄弟が経営の元で、同年に初めて発表された腕時計が、カラトラバの原点Ref.96です。
カラトラバについて
それではカラトラバについて振り返りましょう。
カラトラバの歴史
経営難のPATEK PHILIPPEを立て直すべく、スターン兄弟が着手したのが、当時市場が成長傾向にあった腕時計の制作でした。当時の腕時計はムーブメントを外注しているものが多く、また高性能なものが無く、そこに目を付けたのです。
高級懐中時計を制作し続けてきた職人たちのノウハウを活かしつつ、自社製ムーブメント搭載のドレスウォッチ、初代カラトラバ Ref.96が誕生。「カラトラバ」という名称が広がったのは1980年代以降のことですので、当時は“パテックフィリップで96番目のモデル”だったことから、96と呼ばれていたようです。「クンロク」という愛称はこの番号からきています。
スターン家へ経営が移り、企業としては混乱期の中、僅か1年の開発期間で伝説のドレスウォッチが作られたと考えるととても面白いです。
この秀逸なデザインはイギリス人時計学者デビッド・ペニー氏が手掛けたと言われており、パテックフィリップミュージアムにも当時のデッサンが飾られています。
ドイツで興ったバウハウスの造形芸術運動、「機能がフォルムを決定する」という哲学の影響を色濃く受け、一切の無駄を排除した、究極のシンプルを体現。時代を超えて人々が惹かれ、傑作と称される理由の1つです。
カラトラバの主な機能
カラトラバは基本的に時針・分針・秒針を備えた手巻き式ムーブメント搭載のドレスウォッチです。ラウンドケースにドーフィン針(ドルフィン針)とバーインデックス、6時位置にセンターセコンドを備えているのが、初代96から続く伝統的なスタイルとなります。
現在は自動巻きムーブメントを搭載したモデルや、リーフ針、ブレゲ針、アラビア数字インデックスなど、様々なデザインが見られます。
生産が終了したデザインは、当店のようなユーズドウォッチ取扱店でしか出会うことができません。
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カラトラバの系譜
カラトラバの系譜は大きく96系とオフィサー系の2つに分かれます。
96系
初代Ref.96のスタイルを受け継いでいるカラトラバのことを指します。
Ref.3796
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製造年:1892年~2000年
ケースサイズ:31mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215」
ラインナップ:3796R・3796G・3796J・3796P・3796S(日本限定)・3796D
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初代カラトラバ誕生の50年後の1982年に、初代のデザインに立ち返り、Ref.96の正当な後継機としてデザインを踏襲したRef.3796が誕生。
↑3796R・3796G・3796J
Ref.3796はケースサイズも初代と同じ31mmで、手巻きムーブメント「Cal.215」を搭載していました。
Cal.215は振動数が28,800振動/時とハイビートとなっています。28,800振動/時は現在のムーブメントの主流で、安定した精度を出し、また部品の摩耗のしにくさなどが考え抜かれた振動数となっています。
↑3796S(日本限定)・3796P・3796D
イエローゴールドやローズゴールド、ホワイトゴールド、プラチナと素材のバリエーションが豊富で、また長い製造期間の中、希少な限定モデルも発売されています。後述するクル・ド・パリ装飾を施したモデルも存在します。
Ref.5196
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製造年:2004年~2022年
ケースサイズ:37mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215 PS」
ラインナップ:5196R-001・5196G-001・5196J-001・5196P-001
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2004年にはRef.5196にモデルチェンジ。
ケースサイズはドレスウォッチとして当時主流の37mmにサイズアップしました。カラトラバと言えばこのモデルを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
今年、惜しまれながら姿を消したモデルです。
↑5196R-001・5196G-001・5196J-001
プラチナ仕様のRef.5196P-001はアラビアインデックスを使用するなど、特別感満載のデザインです。
Ref.5296
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製造年:2005年~2019年
ケースサイズ:37mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.324 SC」
ラインナップ:5296G-010・5296R-010・5296G-001・5296R-001
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2005年にはRef.5296が誕生。
念願の自動巻きムーブメント「Cal.324 SC」搭載モデルとなります。また、3時位置には日付表示を搭載。また、シースルーバックも搭載されたので、ムーブメントが見えるように。
さらに、文字盤のバリエーションが2つ存在していたことも面白いポイントです。
96系のスタイルを受け継いでいるのは、Ref.5296G-010、Ref.5296R-010。型番の末尾が010になるものです。
Ref.5296G-001、Ref.5296R-001は2トーンの文字盤デザインとなっています。リーフ針となっていることもポイントです。
素材はローズゴールド、ホワイトゴールドのみとなります。
オフィサー系
Ref.3960
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製造年:1989年
ケースサイズ:33mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215」
ラインナップ:3960J-051
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パテックフィリップ創立150周年を記念したアニバーサリーモデルとして、限定2000本で販売されたカラトラバ Ref.3960です。
「オフィサー」は、第一次世界大戦下に、将校(オフィサー)へ贈った時計を原型としています。
最大の特徴はハンターケース(裏蓋が開閉できる)となっていることです。蓋を開くとパテックフィリップ自慢のムーブメントを眺めることができます。
他にも、直線的なラグに大きなネジ、ターバン型の大型リューズがデザインの特徴となっており、その後のシリーズにも受け継がれていきます。
Ref.5022
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製造年:1997年~2005年
ケースサイズ:33mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215」
ラインナップ:5022J・5022R
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こちらは見た目がオフィサー系ですが、ハンターケースを備えていません。
ブレゲ数字やローマンインデックスの文字盤のバリエーションが存在します。
Ref.5227
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製造年:2013年~2022年
ケースサイズ:39mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.324 SC」
ラインナップ:5227G-010・5227G-001・5227J-001・5227R-001
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2013年には、再びハンターケースを備えたオフィサー系のカラトラバが生まれます。
Ref.5022と違い、見た目は96系のスタイルに。「インビジブル・ヒンジ」と呼ばれる蝶番を使用している為、ハンターケースを備えているとは感じられないほどすっきりとした裏蓋に仕上がっています。
ホワイトゴールドのみ文字盤色が2種類です。
Ref.5153
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製造年:2014年~2022年
ケースサイズ:39mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.324 SC」
ラインナップ:5153R-001・5153G-001・5153G-010・5153J-001
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Ref.5227発表の翌年、ハンターケース、直線的なラグ、ターバン型の大型リューズを備えたRef.5153が誕生。純粋なオフィサーを求めていた人に刺さったモデルではないでしょうか。
TiffanyとのWネームも存在します。
クルードパリベゼル仕様
Ref.3520
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製造年:1960年代~1970年代頃
ケースサイズ:32.5mm
ムーブメント:手巻き「Cal.177/2」
ラインナップ:3520D・3520DG・3520/10
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ベゼルにクル・ド・パリ装飾を施したカラトラバです。
機能美を追求したバウハウス的なデザインから、魅せるための装飾を施し、ラグジュアリーな印象が強くなっています。中にはブレスレット仕様もありました。
Ref.3919
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製造年:1986年~2006年頃
ケースサイズ:33mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215」
ラインナップ:3919G-001・3919J-001・3919J-015
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Ref.3520の後継機となります。クル・ド・パリ装飾のカラトラバがメジャーになったのはこちらのモデルからです。
パテックフィリップの広告にも約10年間起用され続けました。
青文字盤は非常に希少です。
Ref.5119
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製造年:2006年~2019年
ケースサイズ:36mm
ムーブメント:手巻き「Cal.215PS」
ラインナップ:5119G-001・5119R-001・5119J-001
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先程のRef.3919の後継機です。型番の最後に「19」が付く=クル・ド・パリ装飾仕様となります。
美しいデザインは受け継ぎながら、ケースサイズは36mmにアップ。裏蓋はシースルーバッグが採用されています。
Ref.6119
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製造年:2005年~2017年
ケースサイズ:38mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.215PS」
ラインナップ:6000G
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型番からも特殊さが伝わるカラトラバRef.6000G。
ポインターデイトが付いていることが特徴です。昔ながらのドレスウォッチであったカラトラバが、モダンに生まれ変わった1本です。
Ref.6006G
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製造年:2017年~
ケースサイズ:39mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.240PS C」
ラインナップ:6006G-001
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Ref.6000Gの後継機。
「Cal.240」の誕生40周年を記念して誕生した腕時計です。ケースサイズは39mmと大型化。時計界のトレンドを汲んだ1本です。
こちらもTiffanyのWネームが存在しています。
Ref.5123R
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製造年:2012年~2016年
ケースサイズ:37mm
ムーブメント:自動巻き「Cal.240PS C」
ラインナップ:5123R-001(ローズゴールド)
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1950年代のモデルを元にしたカラトラバです。
ラグが短く、革ベルトが細く、裏はシースルーバックとなっています。
Ref.5524G
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製造年:2015年
ケースサイズ:42mm
ムーブメント:自動巻き「CCal.324 S C FUS」
ラインナップ:5524G-001
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デザインからケースサイズから、すべてが特殊なカラトラバ パイロット トラベルタイム。
ケースサイズはノーチラスやアクアノートよりも大きいです。
モデル名の通り、パイロットウォッチで、トラベルタイム機構が搭載されています。
賛否両論があったモデルの1つですが、生産数が少なかったこともあり、現在はプレミア化しています。
当店でも以前は取扱いしていたのですが、最近はなかなか入荷が無いです。
Ref.5212A-001
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製造年:2019年
ケースサイズ:42mm
ムーブメント:自動巻き「CCal.324 S C FUS」
ラインナップ:5212A-001
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ウィークリーカレンダーを搭載したカラトラバです。
ハンマー型指針がデザインのアクセントになっています。日付表示の数字はこのモデルのために新たに書き起こされたデザインです。手書きのような風合いが、ヴィンテージ感も漂わせます。
こちらも国内での流通量がかなり限られており、入手困難なモデルの1つです。
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したもの以外にも、ヴィンテージなど様々なモデルが存在します。系譜も様々なものがありますので、きっとお気に入りのカラトラバが見つかるはずです。
2022年はまだカラトラバの新作が発表されておりませんので、今後の動向にもぜひ注目してみてください。